hiden voice

2003/5/1 「Funny Story」


今日は雨。でも最近は温かく、早くも夏を思わせるような気候だったからいい雨だ。
最近は、シーズンも終わりホッとする間もなくばたばたと生活をしていた。そして次のシーズンに向けて、時は急速に流れている。すべての行事が終わっても、時々スキー場には出没している。お店のお客さんを連れて、滑りにバーベキューに楽しんだりしながら、やっぱりスノーボードは楽しいと実感している今日この頃である。

今日はいつもと変わって、去年の秋の遠征で俺の身に起こった、今だから言える話をしよう。毎年、日本がシーズンインする前に大量の雪を求めてヨーロッパへと行っている。ヨーロッパの氷河は一年中雪が溶けることなく、とてもいいトレーニングができる。
ヨーロッパでの生活は、まずは宿を決め、車を借りる。これは長期間で借りるのでとても安い。俺は雰囲気と物価の安さ、そして壮大なる山があるのを理由に、オーストリアでの生活を好む。その上、色々な国で大会があってもアクセスしやすい場所だからなおいい。
去年の秋は、オーストリア約一ヶ月、イタリアで約二週間のトレーニングを行った。
休みになると色々な都市へ買い物に出かけたり、遊びに行ったりしている。今回はサッカーを二戦も見に行った。一戦はブリンデスリーグ。かの有名なオリバーカーンをこの目で見た。もう一戦はセリエA、中田(パルマ)vs中村(レッジーナ)の日本人対決。これは日本でも話題になっていたから皆知っているだろう。それはもう二戦とも迫力満点だった。サッカーを見るのは初めてだったから、なおさら楽しかった。

さてさて、話がだいぶそれてしまったが、今だから話せる話だったよね。それはもうとても悲しくて、その味わった時間、約三時間が何十時間にも感じた出来事だった。
二ヶ月近いヨーロッパでの生活で、ボサボサに伸びきった俺の髪。鏡を見るたびに切りたくてしょうがなかった。オーストリアでの生活は一軒のアパートでだった。すべての始まりはその場所だからである。アパートの道反対に、一件の美容室があった。そしてそこはいつも混んでおり、通るたびに目にするスタイリストさんは本当にかっこいい人だった。
「あ〜、あの人に切ってもらえたら日本には居ないようなかっこいい髪型になれる!」そう夢を膨らましていた俺は、勇気を出してその美容室へと向かった。案の定予約でいっぱい、その日は切ってもらうことは出来なかった。もう期待は高まるばかり。その翌日に予約を入れ、高まる気持ちを抑えてその日を過ごした。予約当日、どきどきしながら美容室へ。その時にはまだ、これから起こる悲劇など予測すらできなかった。少しだけ切ろうと思っていた俺にはバリカンを持ち出した意味さえ分からなかった。そして、言葉の壁を乗り越えて伝えた言葉は、無様な姿へと変わった。何度も何度も修正された俺の頭は見るに見られない状態、最後に俺の発した言葉は「坊主にしてくれ!」。その上、信じられないほど変えられたカラーリングに髪は染まり、家へと戻った。
その美容室での過程は、みなさんの想像にお任せしよう。思い出すのも悔しいくらいの、そして全身の力が抜けるような時間だったことは間違いがない。

一年ほど前から、東京のとある美容室のスタイリストに髪を切ってもらっている。
いつもいつも満足する髪型に、納得するばかり。そして、この場を借りて謝っておこう。
「ごめんね、違うところで切っちゃって・・・。もう二度と違うところにはいかないからぁ!」
というわけで、とても後悔してしまった今だから話せる話でした・・・。
ひで